仮面ライダーオーズ第四十八話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第四十八話=最終回「明日のメダルとパンツと掴む腕」。
最終話の一番の見所が、既に半ば破壊されてしまった己の生命の核をなすコアメダルを自ら投げ出して武器として使用させたアンク(三浦涼介)の思いと、それを受け止めて無謀な決戦に挑んだ火野映司(渡部秀)の思いとの一致にあったのは間違いない。でも、それだけではなかった。
戦いの日々を完結させて死を覚悟していた火野映司を救出したのが後藤慎太郎(君嶋麻耶)に他ならなかったことも、それに劣らない見所だった。かつて火野映司と出会ったことで己の志や力について見詰め直し考え直さざるを得なくなった後藤慎太郎が、伊達明(岩永洋昭)との出会いによって大きく成長した末に、今、火野映司を救い出したばかりか、火野映司の心にも一つの静かな、しかし大きな変革を生じたのだ。
元来、困っている人々に救いの手を差し伸べたいと願望していた火野映司は、己の手が望み通りには相手に届かないことに絶望し、ここ暫くは無力感を抱くに至っていた。そんな彼にとって仮面ライダーオーズに変身すること、さらにはグリードにまで変容することは、人間の限界を超えた力を獲得することであり、どこにでも届く手を獲得することに他ならなかった。だが、それらの力の全てを失って生命をも失おうとしていた瞬間、後藤慎太郎から手を差し伸べられた。困っている人々に救いの手を差し伸べるための、どこにでも届く手を獲得するということは、実は、皆から救いの手を差し伸べてもらうこと、手助けしてもらうことによっても実現できるのだということを漸く真の意味で悟ることができた瞬間だった。
美麗な容姿に反して冴えない人物であるかに見えた後藤慎太郎がこんなにも大きな意味を担ったところに、彼の物語の面白さがある。やはり「仮面ライダーオーズ」は、後藤慎太郎の青春を描く物語でもあったのだ。
火野映司と対をなすのが後藤慎太郎であるとすれば、アンクと対をなすのはウヴァ(山田悠介)だったろうか。今まで細々と生き残ってきたウヴァは、完全体を獲得して仮面ライダーバース隊を軽々なぎ倒す程の強さを誇ったが、実のところ、それだけの力を獲得したかった彼の目的は単に何が何でも生き延びてゆくことにしかなかったように見える。
彼を「メダルの器」に仕立てて「世界の終末」を実現しようとしたドクター真木清人神尾佑)に追いかけられて、粗大ごみ置き場に身を潜めながら、身中に投入されたメダルの力に突き動かされて苦しんでいた彼は「誰か、助けてくれ」と悲鳴を上げていた。アンクは人間の身体を得て生命を感じて束の間の人生を存分に楽しんだが、ウヴァは生存競争のための戦力の獲得にのみ時間を費やさざるを得なかった。生き延びることにのみ必死で、生命を知ることができなかった。ウヴァ以上に哀れな者は、このドラマにはいない。