スターマン第四話

ドラマ「スターマン -この星の恋」。第四話。
第一話から今宵の第四話の前半までの話は、富士山の麓の、広くて小さな町の、祖母と母と三兄弟の三世代が同居している宇野家に新たな若い「パパ」として記憶喪失の謎の美男子、星男(福士蒼汰)を迎え入れた宇野佐和子(広末涼子)を、もはや後戻りできないところまで追い詰めることに費やされていたと見ることができる。
失踪した夫との間に得た三兄弟の内、三男の宇野俊(五十嵐陽向)は直ぐに星男に懐き、次男の宇野秀(黒田博之)も星男に魅了され、星男をなかなか受け入れようとはしなかった長男の宇野大(大西流星)も受け容れた。さらに重要なことに、もともとは佐和子が星男を騙して家に連れ込んだ格好だったが、星男の過去の真相を知るらしい羽生ミチル(木南晴夏)を交えた三者の話し合いの末、星男が自ら進んで宇野家の「パパ」になることを引き受けた。しかも、この過程で星男が本来は良い人ではなく怖い人であるらしいことも、佐和子は聞かされた。もともとは怖い人だったなんて知らなかった…では済まされなくなったということだ。そして第三話から第四話の前半にかけて、佐和子の夫だった宇野光一(安田顕)が現れ、星男を交えた三者の話し合いの末、光一は佐和子と離婚して、実の子である三兄弟とも泣く泣く縁を切り、星男に後を任せることを決意した。
こうして云わば外堀は埋められた。佐和子は気軽な気分で星男との同居を始めたかもしれないが、今や星男自身も含めた家族の皆が、星男を新たな「パパ」とすることで納得したのだ。ここに至って、仮に佐和子が後悔するような事態が発生したとき、佐和子はどのように考え、行動するのか?というのが次回以降の話になるのかもしれない。今宵の第四話の最後、星男は突然の激しい発作のあと極めてガラの悪い人物に変貌した。昔の、本来の怖い人に戻ったのだろうか。
重田信三(國村隼)は、流石に星男と「同じ仲間」であるだけに、何が起こったのかを理解している様子だったが、安藤くん(山田裕貴)は何が起こったのかを全く理解できるはずもなく、怯えたような、悲しそうな顔をしていた。悲しそうな顔をしながらも、星男が携えていた買物袋を代わりに大切に抱えている姿は健気だった。他方、いつも安藤くんに悲しい思いをさせている臼井祥子(有村架純)は、星男の突然の豹変を目撃して何かを確信したような、そして嬉しそうな顔をしていた。何を理解し、何を期待しているのだろうか。
星男を「仲間」と主張する重田信三に対して佐和子がそれを強く否定しつつ、田舎の小さな街の中で密かに悩み事を抱えていたに違いない重田信三の孤独には同情していた場面は、前回の「ノーマル」論議の延長上にある。互いに重大な勘違いをしているにもかかわらず互いにそのことに全く気付かないまま会話を続け、しかも会話がどういうわけか成立してしまうという笑い所。
佐和子と星男の関係が上手くゆきそうであると見て、不意に寂しさを感じた須田節(小池栄子)が、直後、須田節に熱烈に片想いをしている佐竹幸平(KENCHI)に農道上で遭遇し、今の佐和子と同じように幸福を得るため、思い切って彼の愛を受け容れてしまおうか…と思い始めたところで急に正気に戻り、「妥協」をしないことに決めた場面も悲しい笑い所。佐竹幸平のどこに不満であるのかは謎のまま。
宇野家の三兄弟の長男の大は星男を「パパ」としてではなく歳の離れた兄として受け入れることに決めたが、確かに顔も少し似ていて兄弟に見えるかもしれない。大が星男を父ではなく兄であると強調したのに対し、弟の秀が、星男が家にいてくれるなら父でも兄でも何れでも良いと応じたのも味わい深かった。いつも兄に従ってしまう次男のささやかな抵抗に他ならない。