スターマン第八話

ドラマ「スターマン -この星の恋」。第八話。
今後の成り行きを予感させる材料が与えられた。この物語に登場する「宇宙人」は地球人よりも優れた身体能力を持っているが、特に大きな力として、負傷者や病者を完全に治癒する能力がある。しかるにこの特別な能力はそれを発動した者に多大の負担を強いるのであり、治癒の対象が人間のような大きな生命体である場合には、能力を発動した者の寿命を縮める程であるらしいのだ。ゆえに極力この能力を用いるべきではない…という警告が導き出される。
富士山の麓の、広くて小さな町の、山の中の洒落た一軒家の、祖母と母と三兄弟の三世代が同居している宇野家に、新たな若い「パパ」として迎えられた謎の美男子、星男(福士蒼汰)は、四十年も昔に同じようにこの町へ来た「宇宙人」「仲間」の重田信三(國村隼)からこの警告を与えられた。他方、星男を家族として迎え入れた宇野佐和子(広末涼子)は、四十年も昔に同じように重田信三を家族として迎え入れた重田「古女房」(角替和枝)からこの警告を与えられた。そして星男は、宇野佐和子からもこの警告を与えられた。
ここまで強調されれば、この能力の無理な使用が今後の物語の核をなしてゆくのは見やすい。実際、この能力は先週までの七話を通しても(多分)二回しか使用されてこなかったにもかかわらず、今宵の第八話だけで既に三回も使用されたのだ。先ずは星男が負傷した猫を治癒し、次いで重田信三が孫の重田たけし(佐藤涼平)の彫刻刀による怪我を治癒して、最後に再び星男が、偏頭痛に悩まされる宇野佐和子を治癒した。次回以降ますます能力を使用せざるを得ない事態が生じるのだろう。
宇野家の三兄弟は、長男の宇野大(大西流星)にしても次男の宇野秀(黒田博之)にしても幼い三男の宇野俊(五十嵐陽向)にしても、それぞれ星男を家族として受け入れていたかに見えていた。ところが、長男の宇野大は、星男が宇野佐和子の偏頭痛を完全に治癒したのを盗み見て、複雑な表情をしていた。どういうことだろうか。
あの特殊な能力を使用することが星男の身体に深刻な負担をかけるものであるらしいことを母の言から察知して、星男を心配しているのだろうか。無論そのように解釈する道もないわけではないが、むしろ母を横取りされるかもしれない不安に苛まれ始めたと見るのが妥当ではないだろうか。彼は小学生ではあるが、二人の弟を持つ長男としての責任感を常々抱いていて、家族を守る男でありたいと願望している。祖母の柏原美代(吉行和子)が以前そのように述べていたし、今回も、母が偏頭痛に苦しんでいるのを見るや直ぐに薬を取りに行き、母に手渡していたところにその思いが表れていた。偏頭痛を抑えるための御守として大きなテルテル坊主のような人形を拵えて祈りをこめることも、彼が弟二人を率いて毎回やってきたことだった。しかし今、星男のあの特殊な能力によって、母は病から解放された。宇野大がどう頑張っても実現し得ないことを、星男は一晩で成し遂げた。そして宇野大の気配りも祈りも、これで不要と化した。母の完治は嬉しくとも、素直に喜べない面もあるのは無理もない。
宇野大のどのような言動がどのような事態を生じるのか。注目せざるを得なくなることだろう。
その他、臼井祥子(有村架純)が十五年前に地球へ着陸し、幼くして病で逝去した直後の少女の身体を乗っ取った「宇宙人」であるらしいことが判明したらしい。しかし奇妙なことに、臼井祥子自身に全然そのような自覚がなかったばかりか、重田信三も星男もそのようには感じていない様子であると見受ける。ともあれ、今週も、安藤くん(山田裕貴)に幸あることを願わずにはいられない。