旅行記二/杉並アニメーションミュージアムの怪盗ジョーカー展
旅行記二。
果たしてユナイテッド・シネマ豊洲における「怪盗ジョーカー シーズン4 先行上映祭」の当日券を購入できるのかどうか判らないまま、兎も角も現場へ向かったが、ホテルを出る時間が少々遅くなったのに加えて、有楽町で乗り換える際に少々道に迷ったこともあって映画館へ着いたときには既に十時半を過ぎていた。そして当然のように既に満席になった由。誠に残念。
せめてグッズだけでも買って帰ろうと思い、グッズ売場を見てみれば、驚く程に品数が豊富だった。全種類制覇は不可能であると判断し、「ラバーチャーム」のジョーカーを二個、シャドウ・ジョーカーを二個、「ビッグレザーストラップ」のジョーカーを一個、シャドウ・ジョーカーを一個、「怪盗ジョーカースタンプ」のジョーカー「OK!」を二個、ジョーカー「輝く夜へようこそ!」を一個、シャドウ・ジョーカー「がんばれよ!」を二個、そして「SDアクリルキーホルダー」のシャドウ・ジョーカーを一個。「SDアクリルキーホルダー」のジョーカーは売り切れ。他にも売り切れになっているジョーカーのグッズがあって、改めてジョーカー人気の高さを認識した。場内は子供と若者で満ちていた。関係者と思しい人々も散見され、マスコミ専用の受付も設置されていて、いかにも注目のイヴェントが始まる直前の雰囲気を感じさせた。参加できなかったのが実に残念。
しかし長居しても仕方ないので、直ぐに移動を開始。乗り換えを重ねてJR荻窪駅で降り、延々歩いた末に何とか、昼十二時二十五分、杉並会館の三階にある杉並アニメーションミュージアムへ到着。
藤子・F・不二雄の名作『オバケのQ太郎』に登場するラーメン好きの「小池さん」の正体として知られるアニメーター、鈴木伸一を館長に迎える杉並アニメーションミュージアムでは、七月十三日から今月十六日までの間、「怪盗ジョーカー展 ミラクルミュージアムへようこそ」を開催している。これを観照することが今回の突然の旅行の一番の目的に他ならない。
展覧会の主催者はあくまでも杉並アニメーションミュージアムで、小学館集英社プロダクションは協力者。このことは、テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」が日本のアニメ史上で顕彰するに値する作品であると評価されたことを物語るように思われる。実際、「ダイヤモンドと涙のクイーン」にしても「トラベリング・ジョーカーズ」にしても「パンドラの鍵と滅びの王国」にしても「光と影のジョーカー」にしても「長き夜の終わり」にしても、劇場版として制作した方が良いような作品を通常の三十分番組の枠の中で作り上げてしまった程の気合の入り具合は、確かに特筆に値しよう。シンエイ動画は無論のこと、関係した多くのアニメ制作会社の力量が窺える作品になっていよう。
しかし面白いことに、この展覧会ではむしろ原作者たかはしひでやすに着目し、顕彰に尽力している。テレヴィアニメ化された『怪盗ジョーカー』の原作の原稿をいくつか展示しているほか、『怪盗ジョーカー』の原点となった未公開作品『怪盗エース』の原稿の一部も展示。さらに、『怪盗ジョーカー』執筆時に描き貯めた「アイデアノート」ばかりか、修業時代の学習、研究、苦悩を記したノートまでも、執筆の道具と併せて展示している。いずれも極めて興味深い第一級の資料。それにしても、たかはしひでやすという漫画家は、修業に明け暮れていた苦難の時代にも常に自分自身を客観視できていて、苦難を打破してゆくためには何をなすべきであるのかを冷静に判断し、行動していたらしいことを窺うことができて、そこに最も驚嘆した。『怪盗ジョーカー』成功の根本の原因がそこにあるのは明らかだろう。
もちろんアニメの資料も素晴らしかった。テレヴィアニメ第二十七話(シーズン3第一話)の絵コンテは、完成されたアニメ作品の映像を彷彿せしめる完成度の高さ。素晴らしかった。設定資料も並べていたが、興味深かったのはロードジョーカーに関する資料。たかはしひでやすが常に参考にしているらしい「シェルビーコブラ」のミニフィギュアを展示していた。
展覧会開催に寄せる色紙も楽しかった。たかはしひでやすはジョーカー、フェニックス、ホッシー、ハチを颯爽と描き、寺本幸代は夏の暑さにぐったりしているジョーカー、ハチ、スペードと、涼し気な顔のフェニックス、ホッシーを密集させて、右下に小さく、叱責するクイーンを添える。しもがさ美穂の描くジョーカーとフェニックスは実に美少年。名称が「快盗ジョーカー展」になっているのも良い。村瀬歩、小林由美子、松岡禎丞、種崎敦美の色紙もあった。松岡禎丞はフェニックス=赤井翼の顔を描いていたが、これが驚く程に巧かった。やはり只者ではない。種崎敦美もホッシーを描いていた。
最上階には記念撮影のための場所があり、ジョーカーとシャドウ・ジョーカーの大きなパネルが設置されていた。いずれも『公式ファンブック』の表紙と裏表紙を飾った絵。撮影場所の脇にはワークショップ会場もあって、熱心に絵を描いている子供や親が見られた。
杉並アニメーションミュージアムにはアニメシアターがあり、毎日アニメ上映会を開催しているようで、この展覧会の開催期間には連日「怪盗ジョーカー」シーズン3の作品を上映している模様。今日は午前十一時から第三十五話「英雄の条件」、午後一時半から第三十六話「スカイ・ジョーカー危機一髪!」、午後三時から第二十八話「不死鳥と新たな仲間」を上映していた。シーズン3で一番好きな「英雄の条件」を鑑賞することができなかったのは残念だが、「スカイ・ジョーカー危機一髪!」と「不死鳥と新たな仲間」を鑑賞することができた。子供たちで満席の中、大いに楽しんだ。
合間にはスタンプラリーにも挑戦。何とか成功し、褒美として、二月の上映祭の入場特典(入場者全員プレゼント)だった「限定お宝コミックス」の『コロコロコミック特別編集 怪盗ジョーカー輝く光版』と『コロコロコミック特別編集 怪盗ジョーカー漆黒の闇版』(非売品)の二冊をまとめて頂戴した。これも嬉しい。
ここでもグッズ売場が充実していた。何もかも欲しかったが、厳選の末、「怪盗ジョーカー生ブロマイドセット」のA、B、Cを各一個、「怪盗ジョーカークリアファイル」を二枚、「怪盗ジョーカーチョコマシュマロ」を二個、「コロコロベース限定キャラクターTシャツ 怪盗ジョーカー 大人」(B)を一枚、そして新入荷の「予告状ポーチ」を一個。
この買物をしたのは第二十八話の上映の直前。第三十六話の上映の直前には、ネーム入シールの印刷機で我が名を入れたジョーカーの縦型シールを作成し、ガチャガチャで缶バッジ九個を入手。九個の内訳は、予告状を掲げるジョーカーを二個、トランプを掲げて笑顔のジョーカーを一個、トランプを構える真剣なジョーカーを一個、ハチを一個、スペードを一個、フェニックスを二個、そしてなぜかプロフェッサー・クローバーを一個。シャドウが当たらなかったのは残念。
スタンプラリーに取り組んだのは第三十六話の上映のあとだったろうか。あまりにも楽しく充実した数時間だったので、もはや物事の前後関係を正確に記憶していない有様。
ミュージアム入口にある受付(&売店)の背後には太い柱があり、そこに多くのアニメ関係者が寄せ書きをしている。鈴木伸一(「小池さん」そのもの)を描いたのはもちろん鈴木伸一。鈴木伸一の恩師である手塚治虫を描いたのは片山雅博。ドラえもんを描いたのは渡辺歩。むぎわらしんたろうは「ドラベース」を描いていた。オバケのQ太郎を描いたのは富永貞義。おだてブタを描いたのは笹川ひろし。たかはしひでやすは怪盗ジョーカーを描き、寺本幸代はホッシーを、しもがさ美穂はシャドウ・ジョーカーを描いていた。このシャドウも美しかった。
日本アニメ史をたどる年表には、時代別のテレヴィ受像機を添え、それぞれの受像機の時代のアニメ作品を映していた。受像機の脇にはそれぞれの時代のアニメのグッズが並んでいた。招き猫になったドラえもんのヌイグルミが立派だった。
ミュージアムを出る前に、さらに一冊の書籍を購入。鈴木伸一が藤子・F・不二雄、石ノ森章太郎、藤子不二雄A、赤塚不二夫、つのだじろうとともに結成したアニメ制作会社「スタジオ・ゼロ」の、七年間に及んだ歴史を再現した『ゼロの肖像』。凄いことに、この書籍をここで買えば、スタジオ・ゼロで実際に使用されていた貴重な原稿用紙を一冊まるごと頂戴できることになっていて、本当にそれを頂戴できた。こんな貴重な歴史資料を無料で頂戴できるとは実に凄い。大切に保管しなければならない。
夕方四時の少し前に杉並アニメーションミュージアムを出た。小さな博物館だったが、幅広い年代の様々な来館者で大賑わいで、極めて楽しかった。確かに、手塚治虫も藤子・F・不二雄も石ノ森章太郎も赤塚不二夫も、鈴木伸一の奮闘を喜んでいるに相違ないと想像された。
充実感でボンヤリしていたのか、中央線快速で東京方面へ向かうべきを逆方向へ向かっていたが、直ぐに気付いて吉祥寺で乗り換え、何とか無事に浅草へ戻った。久し振りに洋食店リスボンで夕食。