anego・アネゴ

日本テレビ系ドラマ「anego・アネゴ」。林真理子原作。中園ミホ脚本。制作協力オフィスクレッシェンド篠原涼子主演。第七話。
沢木絵里子(ともさかりえ)は夫の沢木翔一(加藤雅也)に対し離婚届を突き付けた。翔一と野田奈央子(篠原涼子)との間を不倫と疑ってのことだ。翔一が奈央子と会って傘を返してもらったと云ったのに対し、奈央子が翔一とは会っていないと云い、双方の言い分が違うことを決定的な証拠と思い込んだからだが、実際には少なくともその時点ではそんな事実はなかった。でも、ともかくも絵里子は夫に不信感を抱き、実家に帰るという行動に出た。こうして翔一は自由の身となってしまった。絵里子は云わば火のないところに煙を立てて本当に火を点けてしまったわけだ。
他方、奈央子の側に不倫に走る気配はなかった。むしろ数日間続いた黒沢明彦(赤西仁)との急の「同棲」が急に終了したことで却って彼への好意を自覚した。年下の美青年への普通の恋だ。だが、三十三歳の誕生日を迎えた休日のこの急の自覚は致命的だった。奈央子は急に思い立ち、黒沢を呼び出し、結婚を申し込んでしまったのだ。だが、独身貴族の生活を満喫したい考えの黒沢がそれを受け容れるはずもないのは明白だった。五年後まで考えさせて欲しいという黒沢の返答に奈央子は傷付いた。こうして不倫の準備は完了した。奈央子は翔一に誘われて京都への旅行に出発した。
奈央子の心機一転を促した要素として、早乙女加奈(山口紗弥加)の助言の役割は小さくなかったろう。奈央子がアネゴと呼ばれて皆に頼られ、頼られるままに頼り甲斐ある女を演じていることは逆に、派遣社員契約社員たちへの男性社員たちの差別、女性蔑視を助長していると思う!という加奈の言葉に接して、奈央子は職場における己の立場に自信を失い、己の生きる道をやや見失ってしまったらしいからだ。仕事に必死に生きてきた人間が仕事を見失えば、価値観の転倒に至るのは無理もない。おまけに下手に有給休暇を取って三日間も職場から離れていただけに、自己への規律を失ってもいたのだろう。不倫を憎んでいた女を不倫に走らせるだけの条件は偶々このとき整ってしまっていた。