斉藤さん第四話

日本テレビ系。水曜ドラマ「斉藤さん」
原作:小田ゆうあ『斉藤さん』(集英社)。脚本:相内美生。音楽:池頼広。主題歌:観月ありさ「ENGAGED」。制作協力:AX-ON。プロデューサー:西憲彦&渡邉浩仁/佐藤毅(東宝)。企画:東宝。第四話。演出:久保田充。
歳末の市立こばと幼稚園の生じた盗難事件。中村真(加藤清史郎)が阿部聖南(秋元晏斗玲)所有の携帯型ゲーム機を盗み出した理由が案外よかった。真は聖南と一緒に遊びたかったのに聖南はゲームに夢中で遊んでくれないので、ゲーム機がなくなってしまえば一緒に遊んでくれるだろうと考えての行為だったのだ。もちろん行為自体は明白に悪事であり許されることではないが、理由の子どもらしさが救いだ。他方、そもそも幼稚園にゲーム機なんか持ち込んではならない規則はあるわけで、聖南の母(佐藤真弓)がそれをよく弁えて謙虚に行動していたのにも好感が持てる。
彼等に比較すると、真の母、中村久美(矢沢心)には事実上よいところが一つもないが、吾が子の悪事を隠蔽しようとしたその行為を、一体、誰が責められようか。もちろん悪いことだし、また「斉藤さん」こと斉藤全子(観月ありさ)が述べた通り事実の隠蔽は却って中村真の内面に重い負担をかけることにしかならないかもしれないが、それでもなお、あの局面において正義に則り吾が子に謝罪をさせることを選択することは、孟母のような賢人でもなければ難しいのは正直なところだろう。「斉藤さん」にもそれが分かるからこそ、何時ものようには強硬な態度に出られなかったのだろうと思われる。斉藤全子は自身の子だけの問題であれば必ずや謝罪を求めたろうが、他所の家庭にまで同じくすることを要請できる程には強気ではない。ああ見えて「斉藤さん」は、悩みながら、迷いながら、考え抜いて決意して行動しているのだ。
何事にも弱気な真野若葉(ミムラ)は、事件の犯人が吾が子の尊(平野心暖)であるかもしれない可能性を察知するや、全面的に信じたいはずの吾が子を完全には信じ切れなくて怯えていたが、その点は実は「斉藤さん」も変わらなかった。中村真を庇うために斉藤潤一(谷端奏人)は真相を隠し、真野尊にも口止めをしたから、潤一も尊もともに様子が普段とは異なり、怪しく見えたという事情もあるにせよ、正義の人=「斉藤さん」の、吾が子に関して無二の相談相手であるべき夫が仕事のため長期間不在である中での、内面の不安、心の揺らぎを見ておくことも必要だろう。今回は特に、真野若葉の夫、真野透(佐々木蔵之介)の、思いのほかの頼もしさが、それを浮き彫りにした面もあると云える。