炎神戦隊ゴーオンジャー第十四話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第十四話「毎日ドキドキ」。會川昇脚本。諸田敏監督。
今朝の主人公はゴーオングリーン城範人(碓井将大)。他の四人に比べると今一つヒーローには相応しくないかに見えてしまうが、所謂フリーターとして生計を立てる彼の、何物にも囚われようとしない自由と快楽への愛は筋金入りで、その強さは並大抵ではなかった。流石ヒーローだ。
楽しいことに弱い彼は、最も強く楽しいことを求めるためなら辛いことにも容易に耐えることができるし、楽しいことが待ってくれている限り、辛い仕事を手際よく速く片付けることを優先できるらしい。云わば、宿題を片付けてから遊びに行くタイプなのだろう。
蛮機族ガイアークから今回派遣されたのは、害水大臣ケガレシア(及川奈央)の配下の一員、人間たちを温泉の快楽に浸らせて無力化してしまう湯船の化け物カマバンキで、快楽には屈しないかに見えたゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)とゴーオンブルー香坂連(片岡信和)とゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)の三人ともに温泉の虜にしてしまっていたが、その強力な快楽の魔力をあっさり打ち破って三人を救出したのは城範人だった。
なぜなら彼にはそのとき、温泉なんかよりも最高に「ドキドキ愉快」なこととして、謎の美女「汚石玲奈」(その正体は無論、ガイアークのケガレシア)との恋愛が待っていたからだった。玲奈と一緒の時間をゆっくり楽しく過ごすためには、カマバンキとの戦いを少しでも早く済ませておく必要があるので、温泉の快楽なんかに浸っている暇はなかったのだ。三人を救出したあとの彼の戦いにおける手際のよさは凄まじかった。多分、普段の各種アルバイト生活においても何時もあんな調子で手際よく働いているのだろう。見直した。
面白かった箇所が多過ぎて一々挙げてゆけば際限がなくなるが、私的な好みだけで云えば、ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)の相変わらずの鈍さを先ずは挙げたい。ケガレシアが今回カマバンキを出動させた意図について楼山早輝が鋭く見抜き、香坂連が的確に分析し、石原軍平が厳しく責めたとき、江角走輔は威勢よく「そういうことだな!」と相槌を打っただけだった。親切に自ら説明しようとしたところを遮られて気分を害した様子のケガレシアは「な、何という察しのよさ!」と驚いていたが、走輔だけは全然「察し」がよくない。でも、そこがよい。
快楽に屈しない精神力の持ち主(のように振る舞っているものの、どこか如何わしい)藤尾万旦(永田耕一)の山荘における範人の修業に付き添っていた間も、走輔は「藤尾殿」の相槌を打って騒いでいただけ。ああやって勢いだけで存在感を示す辺り、「ますだおかだ」の岡田圭右に近い。実によい。
謎の美女「汚石玲奈」ことケガレシアに一目惚れをしてしまった範人は、「あなたのような人に初めて会いました。強くて、美しくて、清らかな人に」と口説いたが、ケガレシアは怒った。世界を各種の公害によって汚し尽くすことを使命とする蛮機族ガイアークにとって「美しい」とか「清らか」とか云われることは「死に勝る屈辱」だからだが、反面、そのような言葉で愛を告白されたことは心のどこかを深く動揺させてもいたらしい。だが、それは恋ではないのか。このように組織の一員としての使命感と、内心の恋心との間の微妙な揺らぎをもさり気なく描いてみせる点がこの物語の実に心憎いところ。子どもたちだけに楽しませるには余りにも惜しい内容の豊かさ、面白さがある。
ケガレシアとカマバンキとの関係も面白かった。カマバンキは害水大臣ケガレシアの部下だが、この上司のことを「ケガちゃん」と呼んでいた。また、カマバンキとケガレシアが最初の作戦で失敗してガイアークの居城ヘルガイユ宮殿へ逃げ帰ったとき、害地大臣ヨゴシュタイン(声・梁田清之)と害気大臣キタネイダス(声・真殿光昭)の両名が同僚ケガレシアの見込み違いとカマバンキの無様な負け方について大爆笑していたのも面白かった。彼等には時折「本当に悪者か?」と疑わしくなる瞬間があるが、これもその一つだ。