仮面ライダーキバ

東映仮面ライダーキバ」。井上敏樹脚本。中澤祥次郎演出。
第二十六話「メトロノーム-記憶のキセキ」。
蜘蛛ファンガイア糸矢僚(創斗)から鈴木深央(芳賀優里亜)とともに麻生ゆり(高橋優)をも守り、同時に糸矢僚に奪われたイクサを奪回しようとした名護啓介(加藤慶祐)は、仮面ライダーイクサに変身しようもないまま素手で必死に戦っていた。敵うはずもない敵を相手に無数のパンチを食らわせていた姿は、あたかも喧嘩の弱い少年が泣きながら強い相手に反撃しようとジタバタしているかのようでもあった。かつて戦闘の専門家としてどんな強敵にも冷静に立ち向かっていた頃の、「最高」と云われた「名護さん」とは別人かと思われる程の差を感じる。もちろん彼が弱くなったわけではない。己の全知全能に酔うことから醒めて、本当に守るべきもののために余計な体面も捨てて走るべく覚悟を決めたことの表れなのだと解してよい。あのジタバタは改心と再生の象徴だったのだ。
…と感想文を書き終えたところで数箇所のブログを不図見たところ、何れにおいても名護啓介のこの改心をイクサを吾が手に取り戻すための嘘と解していた。確かにそう読めるが、吾、あの名護啓介の不気味な笑顔については、嘘による作戦の成功の喜びの表出ではなく、単に、名護役を演じている加藤慶祐の演技力の不足による表現の不足かと見ていた。