炎神戦隊ゴーオンジャー第四十話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第四十話「将軍フッカツ」。會川昇脚本。佛田洋監督。
サムライ界から来た魔姫の使者、雷々剱(声:内田直哉)と獄々丸(声:松風雅也)は唐獅子狛犬風の容姿。あたかも蛮機族ガイアークの味方であるかのようにして近付いておきながら害水大臣ケガレシア(及川奈央)と害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)を開発室に押し込め(あたかも江戸時代の大名家における「主君押込」の如し!)、ヘルガイユ宮殿を占拠した。その際、ガイアーク蛮機獣を巨大化(「産業革命」)させる妙薬「ビックリウムエナジー」をも盗んでおいたようで、ゴーオンジャーとの戦闘中に彼等はそれを呑んで巨大化、強大化を実現。それが「産業革命」ではなく「富国強兵」だったのが興味深い。産業革命市民社会における変化だが、サムライ界から来た雷々剱と獄々丸の場合、先ずは武士から商人や軍人への変化を要したわけなのだ。刀を算盤へ持ち替えるとは、何と渋沢栄一風な。
雷々剱と獄々丸にとって蛮機族ガイアークが味方ではあり得なかったという点も、ガイアークの行動の特異性を再認識する上で、注目されるに値しよう。ガイアークの目的は人間界を汚すことだが、サムライ界の魔姫一味は人間界を征服したいのであって汚したいわけではない。それどころか、汚されると住み心地が悪くなって征服の甲斐もなくなるので、ガイアークの所業は迷惑でしかない。ガイアークは清らな世界では生きてゆくことができないから世界を汚すわけだが、全ての悪が汚さを求めるわけではないのだ。
サムライ界の英雄、烈鷹(半田健人)によく似た人間界の無職の青年、通称「烈鷹そっくり野郎」(半田健人一人二役])が登場した。彼はサムライ界のこと、烈鷹のことを多少は知っている様子だったが、雷々剱と獄々丸から詳しく聞いていたのだろうか。半田健人の容姿について、かつてウエンツ瑛士は「ミケランジェロダヴィデのような」と形容したが、なるほど今朝のこの番組における半田健人はそんな風に見えた。でも時々桂歌丸のようにも見えたのも正直なところ。美と不気味の間で揺らぐのもまた美しいと云えよう。
折角の就職先を不況下の倒産により失って無職となった不遇な「烈鷹そっくり野郎」は、「誰も俺を認めない!」と嘆き、ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)等に対し「ヒーローとかやってみんなに褒められているおまえらに何がわかる?」と言い放った。確かにゴーオンジャーは劇中の世界において正義の味方として、ヒーローとして皆に認められ、愛されている。でも、生活は極めて苦しい。ゴーオングリーン城範人(碓井将大)のように、各種アルバイトに励んでいる者もいる程。住居は「ギンジロー号」と号するキャンピングカー。だから実は住所不定無職。それでも元気にヒーローをやっている。もし「烈鷹そっくり野郎」がこのヒーローの厳しい現実を知ったら一体どう思ったろうか。ともあれ彼があのあと一体どのような人生を歩もうとしているのか、知りたい者は少なくないに相違ない。