ハングリー!第九話

関西テレビ放送ホリプロ制作ドラマ「ハングリー!」。第九話。
片想いの恋に疲れた大楠千絵(瀧本美織)を、平塚拓(三浦翔平)が「俺が守ってやる」と云って抱き締めていたとき、その片想いの相手である山手英介(向井理)は、彼の仏蘭西料理店と敵対しつつも実は彼の料理に惚れ込んでもいる隣の仏蘭西料理店の経営者、麻生時男(稲垣吾郎)から、一緒に仕事をして欲しいと「プロポーズ」を受けていた。対比にはなりそうもない凄まじい対比。
そんな大楠千絵の家の、家族三人(?)の朝食の様子が見られたのは、今宵の話の冒頭に近い辺のこと(放送の時刻で云えば十時三分頃)。
山手英介の仏蘭西料理店にとっては最高に頼り甲斐ある野菜の仕入れ先である大楠農園の主、大楠義明(橋本じゅん)と彼の長男の大楠佐助(佐藤勝利)はテレヴィの情報番組を見ながら朝食を摂っていて、長女の大楠千絵は遅れて起きてきたところ。料理をしたのは誰だろう。大楠佐助は白シャツに赤いネクタイを締めていた。中学校の制服だろう。
両名が見ていた情報番組に麻生時男が出てきたので、大楠佐助は「あ!父ちゃん、この人じゃない?」と驚いた。なにしろ先日(先週の第八話の最後で)この著名人が大楠農園に「野菜泥棒」として現れて、農園の野菜を全て買い占めたいと申し出てきたのだ。そうした事情を未だ知らない大楠千絵に、弟は「この人ね、このあいだ、ウチの畑に来たんだよ」と説明して、「な?」と父にも同意を求めた。
ここで大楠義明と大楠佐助の両名は、麻生時男との間でどのような遣り取りがあったのかを詳しく回想して明らかにした。テレヴィ画面上はそれは無論、説明の語によってではなく映像によって再現された。要するに先週の話の続きがここで来たのだ。それを見る限り、麻生時男は既に、山手英介を自身の料理店へ料理人として招くことを決め込んでいて、ゆえに山手英介の野菜の仕入れ先をも、自ずから自身の料理店の仕入れ先にしなければならないと考えていたようだ。
麻生時男の満面の笑顔はそうした考えを秘めていることの表れだったろう。大楠佐助が「凄い笑顔だったよ。なあ?」と云って父に同意を求めたのは、その笑顔が意味ありげで不可解に思われたことを物語る。
続く大楠家の出番は農園で大楠千絵が物思いに耽る場面(放送の時刻で云えば十時十一分頃)。
大楠農園の野菜の取引先を、山手英介から麻生時男へ変えるような真似は、くれぐれも止めて欲しい!と強調した大楠千絵に、父は、まさか山手英介の料理店で働いている誰かに恋をしているのではないのか?その相手は、まさか平塚拓ではないだろうな?と詰問し、平塚拓のような華美な男だけは駄目だ!と云い始めた。
この父と姉の遣り取りを見ていた大楠佐助は、平塚拓に対する父の酷評に、「前は感心な若者って云ってたのにな」と呟いた。彼は平塚拓を慕っているのだ。
そこへ現れた平塚拓。彼は大楠千絵と二人で話をしたかったが、二人の様子を遠くから大楠義明と大楠佐助が双眼鏡で観察していた。