ジョシデカ!最終話
TBS系。「ジョシデカ!-女子刑事-」。
脚本:秦建日子。演出:平野俊一。第十話=最終回。
東京都警視庁日暮署刑事課を巻き込んだ連続殺人事件の全体を支配していた犯人が警察学校の教官、岩代百枝(片平なぎさ)であることは先週の第九話において明かされた。その意図には、かつて救急車の通行が迷惑駐輪により妨げられたことで一人の少年の生命が奪われた出来事が深く関与していることも明かされていた。問題は、迷惑駐輪から連続殺人への発展には何か飛躍があるとしか思えないところにあり、そこを埋め合わせる要素が何かあるかもしれないとも推察された。
しかるに今宵の最終話において岩代の語ったところによれば、亡くなった少年の母から執拗な嫌がらせの電話を受けて責任を追及された挙句、その母親が抗議の自殺をしたことで警察署内でも責任を問われて左遷され、刑事として働く道を断たれたことから、全ての発端とも云うべき迷惑駐輪に対し復讐を企てるに至ったというのが、一切の犯行の動機だった。
なるほど、岩代の精神は、刑事として生きるには余りにも脆弱だったと云うほかないし、また亡くなった少年の母親も少々病的な所謂クレイマーだったと云わざるを得ない。見当違いの方角へ向けられた怒り、憎しみが、あれだけ多くの犠牲者を生み出したとは、何と空しいことだろうか。
他方、岩代の犯行は、狙った相手を殺害するにあたり直接に手を下すのではなく相手の周囲の人を騙して操って当の相手への憎しみを煽り殺害させるという手段を取った。実に手の込んだことだ。岩代の行為が単なる怒りや憎しみの衝動に駆られてのことではなく、また亡くなった少年と彼の母親への鎮魂の祈りを込めたものでもないのが明白だ。同情の余地はどこにもない。むしろ殺人それ自体を目的にしていたとさえ云える。快楽殺人と云ってもよいかもしれない。そう考えれば、一連の事件の連続性を誘発した一種の中毒性も容易に説明できよう。
主人公の畑山来実(仲間由紀恵)が岩代を尊敬していたのは、畑山が岩代の正体を見抜けなかったからというよりは岩代が立派な警察学校教官を見事に演じ切っていたことによるところ多大だが、実のところ岩代にとっては警察学校教官としての経験こそが、人を導き操る術を身に付ける契機だったわけなのだ。