炎神戦隊ゴーオンジャーGP32

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第三十二話「秘宝ヲサガセ」。武上純希脚本。渡辺勝也監督。
ゴーオンジャーが山奥で遭遇した幼い二人兄妹、黒岩大(市川理矩)と黒岩幸(小西結子)の住んでいる家は、路上生活者よりは恵まれているにしても、貧しく過酷な環境だった。食う物も薩摩芋のほかは自分たちで魚を川で釣って得るしかない有様。二人がこのような貧困にも耐えようとしているのは、父の黒岩六郎(志水正義)がこのような生活を始めたのが二人を幸福にしたいと思うからであることを知るからだった。黄金の龍の埋蔵地を記した古地図を入手した六郎は、現地に居住して日々その秘宝を探し当てようとしていた。恐らく二人兄妹は父が宝を見付け、富を得ること自体を期待していたわけではないだろう。実際、黄金の龍が天空へ飛び立ち遠くへ去るのを見て二人は父の大願が成就したものと受け止め、喜んでいた。財宝を手に入れて裕福になることを夢見ていたわけではなく、母の亡き今、三人家族で心豊かに暮らしてゆくことだけを望んでいたのだ。
ゴーオンブルー香坂連(片岡信和)とゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)、ゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)の三人が二人兄妹の貧困を見て両名の父に対し怒りを抱いたのは当然だ。特に連には、母親のような心もあれば教育者のような心もあるから怒りも大きかったろう。「時々いるんすよね」「辛い現実から目を逸らして非現実的な話に溺れる人」という連の分析は、間違いなく真実を突いていた。ゴーオンジャーという正義の味方の熱い正義感を説得力あるものにしているのは、連を代表とする彼等のこのような責任感や社会性、知性であると云えるだろう。
他方、ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)とゴーオングリーン城範人(碓井将大D-BOYS])はむしろ六郎の宝探しに「ドキドキ興味!」を抱いた。結論から云えば黄金の龍の謎が解かれて財宝の夢が早く破れ去ることこそが黒岩六郎に対し一家の生活の建て直しを促すための最善の近道だったわけだから、財宝を早く見つけ出してやろうという走輔と範人の行動は正しかったことになる。好奇心や快楽主義に走ってもなお結局は最も正しい選択をできてしまうところにヒーローとしての彼等の天才性がある。ゴーオンジャーが単なる正義の味方であることを超えてヒーローであるためには彼等が不可欠なのだと云えるだろう。