ドン★キホーテ第三話

日本テレビ系。土曜ドラマドン★キホーテ」第三話。
先の土曜日の夜に見るつもりだったのを見逃していたが、予約録画しておいたのを漸く見た。このドラマの面白さを盛り上げている要素として、スペイン風と云ってよいのか、むしろキューバ風とでも云うべきか、所謂ラテン風の音楽の効果は極めて大きい。特に、心に訴えるべき場面に流れるギター音楽はその沈んだ旋律をきらめかせる装飾音によって心に響く。
話は盛り上がるだけではなく、まとまってもいる。
例えば、京浜児童相談所児童福祉司の城田正孝(松田翔太)の姿をした鮫島組の組長の鯖島仁(高橋克実)にとっては、京浜警察署の刑事の神山竜(大河内浩)は許し難い永年の天敵であり、そのゆえに城田正孝の姿をした鯖島仁は今回の事件に真剣に取り組んだ。神山竜に手柄を立てさせないために、事件に関与していると疑われている少年を最後まで守ろうとして、そして実際に守り抜いた。だが、少年を疑っていた神山竜の「刑事の勘」も決して間違ってはいなかった。少年は、城田正考の姿をした鯖島仁の行動と言葉に心動かされて、自身の誤りを認め、過ちを明かした。主人公の掟破りの出鱈目な行動が少年たちを救済してゆく奇妙な奇跡を描くというドラマの基本を守りつつも、同時に、主人公に敵対する警察を徒に悪役に仕立ててしまうことをも回避したところが上手い。
裏社会の人間が正論を述べて正義を行うドラマであれば少なくないが、このドラマにおける城田正孝の姿をした鯖島仁の場合、正しい言動は彼の全ての言動の三分の一にも満たないのではないだろうか。前回の第二話において事件を解決へ導いたのは彼の言動が全く出鱈目だったからだとさえ云える。他方、今回の第三話では彼は一寸は正論を述べた。仮名で未知の者と繋がってしまうような世界で本当の友なんか見付かるはずがない!という彼の主張には迫力があった。でも、迷える少年の心を救ったのはそんな彼の正論そのものであるよりは、むしろ城田正孝の姿をした鯖島仁と鯖島仁の姿をした城田正孝の、熱情と真直ぐな行動力に魅了されたことだったろう。
この、現実の世界で友を作ることができず、インターネット上に真の友を探し求め、縋り付いた結果、不本意にも犯罪に関与してしまった迷える少年、松岡文也を演じたのは田中碧海。その顔には何かしら見覚えがある気がしていたが、今インターネット上に検索してみれば、なるほど、明治乳業「おいしい牛乳」のテレヴィCMで乳牛の乳をもんで、その手ごたえに感動していた少年を演じた子役だったらしい。